研究室紹介

 
広島工業大学工学部建築工学科 環境音響学研究室
スタッフ 准教授 中西 伸介
准教授・博士(工学)
中西 伸介

室内の音環境を静穏に保つために屋外や隣室からの騒音を入れさせない「遮音構造」や室内の響きを適切に調整するために使われる「吸音構造」の音響特性を明らかにする研究を行っています。また、建築工学における教育では建築環境工学を担当して、明るさに関わる光環境、暖かさや涼しさに関わる熱環境、空気の清浄度に関わる空気環境、静けさや響きに関わる音環境を学生に講義しています。

神戸大学大学院の修士課程を修了して母校の技官に着任して私の研究者としてのキャリアが始まりました。楽器から球面波入射と同時に機械的な加振を受けるステージ床の音響特性をモデル解析した業績をもって博士の学位を授与されました。以降、音響反射や吸音、遮音のメカニズムを明らかにする研究に従事しています。

その中で、中空層が2層に分けられてそれぞれ空気やグラスウールなど任意の媒質で充たされている2重板構造における音響透過について、入射・透過音波と2枚の板の振動を連成させてヘルムホルツ・キルヒホッフの積分公式を用いてモデル解析を行いました。既往研究で得られていた実測データとの検証を以て設計者が利用しやすい予測プログラムを総合建設業の技術研究所と共同で開発した経験もあります[1]。

最近では、断熱性や遮熱性に優れたペアガラスにおいて2枚のガラスと中空層が「質量−バネ−質量」となる単一共振系によって生じる音響透過現象の解消を目的とした小型の共鳴器型吸音体の研究を行っています[2-4]。音響透過現象の共鳴周波数に吸音のピークを調整された小型の共鳴器を中空層内に組み込んだペアガラスの透過損失を測定してその効果を検証しています(写真1・2)。現在のところ、まだ不十分な改善量ではありますが、効果の大きな共鳴器の構造を検討しています。


写真1)ペアガラスの透過損失測定の様子

写真2)中空層内に組み込んだ小型共鳴器

一方で、小型の共鳴器を用いた吸音構造の音響特性を実測して解明する研究を続けています。密閉された空洞部に小さな開孔と頸部を持つヘルムホルツ共鳴器や孔あき板に注目して小型・薄型の共鳴器構造の開発を目的としています(写真3・4、図1・2)。

その小型の共鳴器には、近年普及してきている比較的安価な3Dプリンタを使って複雑な頸部を作りました。開孔部の寸法が2mm〜3mm角程度で頸部の長さが80mmありますが、共鳴器表面の板厚5mm程度の中に折り曲げて内蔵し、共鳴器全体の厚みを20mm程度まで薄くすることができました[5-7]。

さらに測定の結果、100Hz前後の低周波数に吸音特性のピークを調整できることを確認しており、自在にピーク周波数と吸音率を調整できる構造の検討を行っています(図3・4)。


写真3)屈曲したネック部を持つ孔あき板とヘルムホルツ共鳴器(オープンキャンパスに出展)

図1)薄型吸音タイルの3Dモデル

写真4)EA-noise法を用いた吸音率測定の様子

図2)薄型吸音タイルの吸音率

図3)小型のヘルムホルツ共鳴器の3Dモデル

図4)小型のヘルムホルツ共鳴器の吸音率

[1] Shinsuke Nakanishi, Motoki Yairi, Atsuo Minemura, “Estimation method for parameters of construction on predicting transmission loss of double leaf dry partition,” Applied Acoustics 72, pp.364〜371 (2011).

[2] Shinsuke Nakanishi, “Effects of constructions of resonators in a cavity to sound insulation of thin double-leaf panels,” Proc. InterNoise 2012 (New York, NY) (2012)

[3] 中西伸介, “薄型2重板構造の遮音性能の向上に関する検討 −中空層内に設置する共鳴器の吸音性との対応について−,” 日本音響学会秋季研究発表会 (2012.9)

[4] Shinsuke Nakanishi, “Structures of resonators in a cavity for improving a sound insulation of a thin double-leaf panel,” Proc. 21st Int. Congr. On Acoust. (Montreal, Canada)21st ICA(Montreal, 2013)(2013)

[5] Shinsuke Nakanishi, “Sound absorption of Helmholtz resonator included a winding built-in neck extension,” Proc. InterNoise 2016 (Hamburg, Germany), InterNoise 2016 (Hamburg, 2016) (2016.8)

[6] 中西伸介, “ネック延長部を折り曲げられたヘルムホルツ共鳴器の吸音特性,” 音響技術 N0.177, pp.37-42 (2017.3)

[7] 中西伸介, “孔あき板の吸音特性の低周波数化に係る板に内蔵された屈曲細管によるネック延長の効果,” 日本建築学会大会(関東), (2017.9)